今回はPACSシステムについての概要を説明したいと思います。システムが被ってるっていうツッコミはなしでお願いします(笑)
PACSとは?
先輩~。医師や技師さんが「PACSにはもう反映されてる?読影ついてる?」って会話してるの見かけたんですが、PACSってなんですか?あと読影も良くわかりません(泣)
PACSっていうのはPicture Archiving and Communication Systemsの略で医療用の画像管理システムのことだよ。モダリティ(CT,MRI,USなどの撮影機器)画像をデジタルデータとして受信し、一元管理・保管しておくシステムのことなんだ。
なるほど。だから撮影した画像を電子カルテの画面から見ることができるんですね。
そうそう。正確には、HISまたはオーダリングシステムと呼ばれる電子カルテの画面からPACSに保管されている画像を呼び出しているって感じかな。紙のフィルムと比べると
- スペースの節約
- 院内のPCであれば、どこからでも閲覧可能
- デジタルデータのため、長期間保存が可能
等といったメリットがあるよ。
ちなみに、読影ってなんですか?
読影っていうのは、放射線科医師等が、撮影された医療用画像を確認し、報告書を作成することを言うよ。例えば
【所見】○○の検査から△△に□mm大の☓☓を認めます。
【診断名】◯◯疑い
といった感じかな。
全部が全部ではないけど、概ねその認識で大丈夫だよ。ちなみに、こういった医療用画像管理システムが作られる前はどうやっていたか知っている?
んーと…ドラマとかでレントゲンの写真を「カシャン」って光る板みたいなところに挿しているシーンを見たことがあります。
そうそう。少し前までは、画像をフィルム化し、シャーカステンという透過用のフィルムを見るための機器に挿し込んで、読影を行っていたんだ。今でこそPACSが開発されてからは随分楽になったけど、医療用画像の保管義務をあって、フィルムの保管場所を確保するのが大変だったんだ。
便利になったんですね。
医療情報システム(電子カルテ)との連携について
そういえば、さっき電子カルテの画面から医療用画像が見れるって言ってたけど、どんな感じの流れで医療用画像が撮影されて閲覧できるようになるか、わかりやすく説明するね。
お願いします。
まず、患者さんが来院します。
そこからですか(笑)
一応最初からの方がわかりやすいかなと。
助かります。
では気を取り直して…診察室で医師が診察を行います。その際に「原因精査のために、CT検査をとってみましょう。」となったとします。
はい。
その場合、CT検査のオーダー(撮影依頼)を電子カルテの画面で行うよ。
オーダーを出す際は
- 検査種別:CT
- 撮影範囲:腹部
- 検査目的:腹痛精査
- 読影:希望あり
といった感じで、該当するものを選択し、検査目的を記載するよ。
ふむふむ。
ここまでが、医師または医師事務作業補助者が行う作業になるよ。
オーダーが登録されると、RIS(放射線科情報システム)に、患者さんの情報やオーダー情報が連携されるよ。
新しい単語が出てきましたね。RIS…ですか。
うん。RISは撮影予定の患者さんの一覧を表示したり、撮影場所での受付・実施等の進捗管理を行うことができるシステムだよ。主に、撮影を行う放射線技師が操作を行っているよ。
なるほど。
RISで受付を行ったら、CT画像の撮影を始めるよ。撮影が終了したら、撮影装置に保存された医療用画像をPACSに送信するんだ。装置からPACSに画像を送り終えると、電子カルテの画面からPACS画面を呼び出して画像が見れる状態になるって感じかな。
なんとなく流れがわかりました。
あとは、撮影された画像を見て、放射線科の医師等が読影を行う流れになるかな。
なるほどなるほど。
おさらいすると
- 検査オーダーを電子カルテで行う。(医師または、医師事務作業補助者)
- RISで受付を行う。(放射線技師…etc)
- 撮影を行う。(放射線技師)
- 撮影した医療用画像を装置からPACSに送信する(放射線技師)
- PACSに保存された医療用画像から読影を行う(放射線科医師..etc)
- 電子カルテの画面からPACSを呼び出し、患者さんに結果の説明を行う(医師)
って感じかな。
ここまでの流れが理解できたら、もう少しシステム的なところを詳しく話すよ。
え?もっとあるんですか。
まぁ聞き流す程度でもいいよ。
DICOM、MWM、AccNoとは?
さきほど話した
- HIS(電子カルテ)
- 撮影装置(CT、MRI…etc)
- PACS
といった3つの関係性の中でよく出てくる言葉として、DICOM、MWM、AccNoというものがあるよ。他にも、HL7等いろいろあるんだけど、まずはこの3つが重要かな。
DICOM、MWM、AccNo?頭がおかしくなりそうです。
一つずつ説明するから安心してね。
わかりました。
DICOMとは?
まず、DICOMは、Digital Imaging and Communications in Medicineの略で、医用画像関連機器の間で用いる通信プロトコルについて定義された、共通規格のことだよ。
む、難しい…
簡単にいうと、医療用画像を撮影してPACSに保存するときは、共通のルールに基づいて保存しましょう。ってことだよ。その規格がDICOM。この規格に準拠することで、異なる機器やメーカー間でも画像のやり取りができるようになるんだ。
なるほど。
MWMとは?
次にMWMなんだけど、これはModality Worklist Managementの略で、撮影機器で撮影を行う前に、ワークリスト(主にRIS)から情報を受け取る操作のことだよ。これもさっき話したDICOM規格に基づいているんだ。
ワークリストから情報を受け取るっていうのは、例えばどんなことですか?
例えば、患者さんの「患者ID、名前、年齢、性別、検査部位」といった情報になるよ。これらをHISまたはRISから受け取ることで、撮影時にこの撮影した画像は、◯◯さんの画像ですといった紐づけが自動でされるんだ。
それは便利ですね。毎回患者さんの情報を登録しなくてもいいですし、撮影間違い等もなくなりますし。一石二鳥ですね。
うん。他にも、身長や体重等も連携の可能になっているから、撮影の補助にも役立つんだ。
なるほど。
AccNoとは?
最後にAccNoなんだけど、これはAccessNumberやAccession Numberと言われるもので、検査オーダーと画像を紐づける一意の番号になるよ。この番号を主キーとして、オーダー、画像、読影レポートを結びつけるんだ。
あれ?患者さんのIDも一意のはずですが、検査画像に対してはAccNoを使うのですか?
いい質問だね。患者さんのIDも確かに一意なんだけど、例えば、同じ撮影機器で複数回撮影をしている患者さんだと、どの検査オーダーに対して、どの画像を結び付けていいかわからなくなってしまうんだ。なので、こういったやり方が取られているんだ。
そういうことなんですね。
一連の流れについて
これらを踏まえた上で、一連の流れを図にしてみるとこんな感じかな。
-
陽(はる)
文字にすると
- 検査オーダー(AccNoを発行)
- RIS(放射線科システム)で受付(この時点でAccNoが発行される場合もある)
- 撮影機器でワークリスト取得(AccNoを元にMWM連携)
- 撮影した画像をPACSに送信(DICOM規格)
って感じかな。
ありがとうございました。
まとめ
今回は、医療従事者でも以外と知らないPACSに関する仕組みについて説明してみました。
いろいろと簡略化している部分もありますので、ざっくりとした流れとして理解いただけたら幸いです。
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