診療記録(カルテ)について
今回は少し診療記録(カルテ)にとはどういったものかということを改めて考えてみたいと思います。
診療記録とは
狭義の意味では医師の記録ということですが
広義の意味では看護師・コメディカル等が記載した内容も含む
患者の診療の事実とその経過の記録のことです。
診療記録の価値
日本における診療記録には下記の7つの価値があると言われています。
- 患者にとっての価値(Value to the patient)
- 医師にとっての価値(Value to the physician)
- 病院にとっての価値(Value to the hospital)
- 法的防衛上の価値(Value in legal defense)
- 公衆衛生上の価値(Value in public health)
- 医学研究上の価値(Value to the reseach)
- 医療保険上の価値
簡単に説明すると
患者の経過を見ることができ、医師の教育にも役立ち、病院の医療安全や経営にも役立ち、法的紛争の対策にもなり、保健衛生や感染症の資料にもなり、医学研究にも利用でき、診療報酬の請求の根拠にもなる。
ということです。
とにかくいろいろ利用できるのですが、逆にいうとしっかり記載しておかないと上記のような価値を生み出せないので、診療記録は医療においてとても大事になってきます。
診療記録の記載
診療記録の記載についてです。
記載内容
医師法第23条において
- 診療を受けた者の住所、氏名、性別、年齢
- 病名及び主要症状
- 治療方法(処方及び処置)
- 診療の年月日
を記載するようにと、されております。
それ以外の諸記録は
医療法第21条、22条において診療に関する諸記録として記載が定められています。
記載方法
記載方法については特に法律は決められていませんが、誰がみてもわかりやすく情報共有がしやすい方法で記載することが望ましいとされています。
代表的な記載方法は
POS(Problem Oriented System:問題指向型診療システム)基づいた
POMR (Problem Oriented Medical Record:問題指向型診療記録)です。
詳しい書き方については、また別の機会に載せれたらと思います。
診療記録の保存
診療記録は職種や内容によって保存期間が異なりますが、例えば
医師法第24条において
「遅滞なく、診療録に記載しなければならない。また、その保存は病院または診療所の管理者の責任のもと、5年間行わないといけない。」
とされています。
他にも、健康保険法により定められた
「保険医療機関及び保険医療担当規則」 = 療養担当規則
においても、保存期間が定められています。
これらの諸記録の保存期間に関しては過去記事でまとめたものがありますので、そちらをみてくれると嬉しいです。
電子媒体における診療記録の保存
一昔前は紙のカルテが主流でしたが、現在は電子媒体による記載(電子カルテ)が当たり前のように普及しています。
電子での保存については
1999年の厚生労働省通知における「診療録等の電子媒体による保存について」で認められるようになりました。
そこからいろいろと改定がされて、現在は「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」
にまとめられています。
その中で求めれる基準として
- 真正性 ▶︎ 虚偽入力や書き換え、消去など防止し責任の所在を明確にすること。
- 見読性 ▶︎ 肉眼で見読可能な状態にし、いつでも書面に起こせること。
- 保存性 ▶︎ 法令に定められた期間、復元可能な状態で保存されていること。
という3つの条件が示されています。
これを「電子保存の3原則」と呼びます。
なんだか情報セキュリティの3原則みたいです。ちなみに情報セキュリティの方は、機密性、完全性、可用性になります。
診療記録の提示
記載された診療記録は、法的な義務として提示しないといけないことがあります。
例えば
- 医療監視員の立ち入り検査における提示(医療法第25条)
- 犯罪の強制捜査(刑事訴訟法第220条)
- 裁判所の令状による差押え、捜索、検証(刑事訴訟法第218条)
- 裁判所の証拠保全による提示(民事訴訟法第234条)
- 弁護士からの照会(弁護士法第23条2)※患者の同意は必要。
- 個人情報保護に関する法律に基づく情報開示
などがあります。
まとめ
今回は診療記録(カルテ)とはどんなものか、ということについて記載してみました。
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